親から相続した空き家が兄弟姉妹など複数人の共有名義になっているものの、そのうちの一人と長年連絡が取れず、住民票の異動先を追っても所在がつかめない——という相談は珍しくありません。共有名義の不動産は、売却するために原則として共有者全員の同意が必要なため、所在不明の共有者が一人いるだけで話が進まなくなってしまいます。2023年(令和5年)4月1日に施行された改正民法では、この「所在等不明共有者」がいる場合に、裁判所の関与のもとで持分を取得・譲渡できる制度が新設されました。制度の概要と利用時の注意点を整理します。

共有名義の空き家が動かせなくなる典型パターン

空き家が共有名義になる最も多いきっかけは、相続時に遺産分割協議をせず、あるいは協議はしたものの登記を済ませないまま法定相続分どおりの共有状態が続いてしまうケースです。共有者の人数が増えるほど、転居や再婚、疎遠化などで連絡先が分からなくなる共有者が出てきやすくなります。売却や大規模なリフォームといった「変更行為」には共有者全員の同意が必要なため、一人でも所在不明の共有者がいると手続きがまったく進まなくなります。

改正民法で新設された2つの制度

制度 できること 手続きの概要
所在等不明共有者の持分取得(民法262条の2) 他の共有者が、所在等不明共有者の持分を裁判所の決定により取得する 地方裁判所に申立て、公告・供託等の手続きを経て決定を得る
所在等不明共有者の持分譲渡権限付与(民法262条の3) 他の共有者全員が持分を譲渡することを条件に、所在等不明共有者の持分も含めて第三者に売却できる権限を裁判所から得る 買主が決まっている場合などに利用され、供託額は裁判所が定める

持分取得の制度は、所在不明の共有者の持分を他の共有者が自分のものにして単独名義に近づける仕組みです。一方、持分譲渡権限付与の制度は、共有者全員(所在不明の共有者を除く)が売却に同意していて、買主も見つかっている場合に、所在不明の共有者の持分も含めてまとめて売却できるようにする仕組みで、実際に空き家を売りたい場面ではこちらが使われることが多くなります。

手続きの流れと期間の目安

  1. 所在調査を尽くす:住民票、戸籍の附票などを取得し、通常の方法で所在が判明しないことを確認・記録する。
  2. 地方裁判所に申立てを行う:不動産の所在地を管轄する地方裁判所に、持分取得または持分譲渡権限付与の申立てを行う。
  3. 公告・異議届出期間:裁判所が公告を行い、一定期間(原則3か月以上)異議の届出を受け付ける。この間に所在等不明共有者本人や利害関係人からの異議があれば手続きが止まる。
  4. 時価相当額の供託:持分に相当する時価額をあらかじめ供託することが求められる。
  5. 裁判所の決定:異議がなければ裁判所が決定を出し、持分の取得または譲渡権限の付与が確定する。

公告期間だけで数か月かかるため、申立てから決定までは半年前後を見込んでおく必要があります。共有者の一部と連絡が取れる場合でも、他の共有者が売却に難色を示すケースについては、共有持分だけを先に売却する方法もあり、共有持分の売却方法もあわせて確認しておくと選択肢を比較しやすくなります。

相続登記が未了のまま放置されているケースへの影響

共有者の所在が分からなくなる背景には、そもそも相続登記が長年されておらず、誰が正確な共有者なのか、持分割合がどうなっているのかすら把握できていないケースも多くあります。2024年から相続登記が義務化されたこともあり、まずは登記簿と戸籍をたどって現在の共有者・持分を正確に把握することが、所在等不明共有者の制度を使う前提として欠かせません。相続登記が未了のまま空き家を売却しようとする際の注意点は、相続登記未了の空き家を売却する方法で詳しく解説しています。

裁判所の手続きを避けたい場合の選択肢

公告・供託を伴う裁判所手続きは、時間も費用もかかるため、共有者間の関係性によっては別の解決方法を検討したほうが早く進むこともあります。所在不明の共有者以外の共有者間で話し合いがまとまるのであれば、自分の持分だけを専門の買取業者に売却し、その後の交渉を買主側に委ねるという方法も選択肢の一つです。空き家全体をどう手放すか迷っている場合は、訳あり不動産の売却方法も参考にしてください。

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共有者と連絡が取れない空き家の売却条件を相談する

共有名義のままでも相談できる窓口を確認する

共有者の人数、連絡が取れる共有者の範囲、これまでの調査状況を整理して伝えると、裁判所手続きが必要かどうかも含めて相談しやすくなります。

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