借地権付き建物の売却を考えたら、最初に土地と建物の登記事項証明書、借地契約書、直近の地代支払記録をそろえてください。売れるかどうかは、建物の古さより先に、敷地を使う権利が地上権土地賃借権かで確認順が変わります。土地賃借権なら、買主探しと並行して地主との調整が必要です。

先に結論:借地権付き建物は売却できるが、権利の種類で手続が違う

国土交通省の実務マニュアルでは、借地権が地上権なら売却に地主の承諾は不要、土地賃借権なら原則として地主の承諾が必要と整理されています。土地賃借権で地主が承諾しない場合も、一定の要件のもとで裁判所へ承諾に代わる許可を申し立てる制度があります。ただし、契約内容や買主候補が決まっていない段階で、許可される、いくらで売れると断定することはできません。

売却可否は「権利の種類→地主の回答→買主候補」の順で判断する

「借地権」という呼び方だけでは、売却に地主承諾が必要か判断できません。借地借家法上の借地権には、建物所有を目的とする地上権と土地賃借権があります。登記と契約書を確認し、権利の種類、存続期間、更新、譲渡・増改築の特約、地代の滞納、建物登記の名義を一枚にまとめます。

確認結果 次に確認すること 売却判断
地上権 登記内容、存続期間、建物名義、契約上の条件 地主承諾を前提にせず、権利と建物を買主へ移せる条件を専門家に確認
土地賃借権・地主が承諾 買主、承諾の範囲、名義書換料、地代、更新・建替え条件 書面化する条件をそろえて売買契約と引渡しを設計
土地賃借権・地主が拒否 拒否理由、買主候補の資力、残存期間、これまでの借地経過 交渉継続か借地借家法19条の申立てかを弁護士へ相談
契約書や登記が不明 法務局資料、地代記録、更新書類、当事者間の経緯 権利を推測したまま価格提示や契約を進めない
借地権付き建物について地上権か土地賃借権かを確認し、地主承諾または裁判所許可へ進む判断図
権利の種類を確定してから、地主承諾と裁判所手続の要否を分けます。

地上権なら地主承諾を前提にせず、登記と契約条件を確認する

地上権は、他人の土地で建物などを所有するための物権です。国土交通省の実務マニュアルは、敷地利用権が地上権の場合、売却について地主の承諾は不要と整理しています。ただし、「借地権」と呼ばれているだけで地上権と決めつけてはいけません。土地の登記事項証明書、設定契約、存続期間、地代に相当する地代・地上権料、建物の登記を確認します。

登記された権利の範囲と、実際に建物や通路として使っている範囲が一致しない場合もあります。越境、私道、接道、未登記増築など別の問題があれば、地上権だから自由に売れると断定せず、土地家屋調査士、司法書士、弁護士、不動産会社へ資料を示して確認してください。

土地賃借権は賃貸人の承諾を得てから譲渡条件を固める

民法612条は、賃借人が賃貸人の承諾を得なければ、賃借権を譲渡し、または賃借物を転貸できないと定めています。借地上の建物を第三者へ売り、その買主へ土地賃借権を移す場合は、この承諾が中心的な確認事項です。無断譲渡は契約解除の問題につながり得るため、口頭で「たぶん大丈夫」と聞いただけで進めないでください。

地主へ相談するときは、「建物を売りたい」だけでなく、買主候補の氏名または法人名、利用目的、資力を示す資料、譲渡予定日、残る借地期間、地代、建替え予定の有無を整理します。地主の回答は、承諾するかどうかだけでなく、承諾の対象、名義書換料、地代や保証金の扱い、更新・増改築条件まで書面で確認します。

承諾料に法定の一律割合はありません

借地権の譲渡承諾に伴う金銭は、名義書換料や譲渡承諾料と呼ばれます。しかし、承諾料に法定の一律割合はありません。借地契約、地域、残存期間、地代、更新歴、買主や利用方法などで条件が変わるため、「借地権価格の何%」という数字だけを売却計画へ入れないでください。

国税庁の質疑応答事例では、借地上の建物を第三者へ譲渡するとき、地主が借地人から受け取る名義書換料について、土地を利用させる対価として消費税は非課税とされています。これは示された事実関係に対する回答です。所得税、法人税、譲渡所得、必要経費への算入など、別の税務判断まで一律に決めるものではありません。

金銭・条件 誰と確認するか 確認内容
名義書換料・譲渡承諾料 地主、借地人、双方の専門家 金額、支払時期、返還の有無、承諾書との関係
地代・未払金 地主、管理者 引渡し日までの精算、改定予定、振込先
保証金・敷金 契約当事者 承継するのか、売主へ返還するのか
更新・建替え条件 地主、不動産・法律専門家 残存期間、更新料、増改築承諾、用途制限
税務 税務署、税理士 当事者と取引内容に応じた課税関係

地主が拒否したら借地借家法19条の要件を確認する

土地賃借権の譲渡を地主が承諾しない場合、借地借家法19条は、買主が賃借権を取得しても地主に不利となるおそれがないのに承諾しないとき、裁判所が承諾に代わる許可を与えることができると定めています。裁判所は、残存期間、これまでの借地関係、譲渡を必要とする事情など一切の事情を考慮し、借地条件の変更や財産上の給付を許可の条件にすることもできます。

申立てだけで許可されるわけではありません。大阪地方裁判所の案内では、賃借権譲渡許可の申立てで、土地・建物の登記事項証明書、公図、賃貸借契約書、路線価図、固定資産評価証明書などに加え、買主候補が個人なら住民票、法人なら全部事項証明書、さらに資力を証明する書面が挙げられています。抽象的に「いつか売りたい」と申し立てるのではなく、具体的な譲受予定者と条件を準備する手続です。

  1. STEP 1地主へ提示した買主、条件、回答、拒否理由を時系列で記録する
  2. STEP 2登記、契約書、地代記録、固定資産評価証明書、公図をそろえる
  3. STEP 3買主候補の本人・法人資料と資力資料を準備する
  4. STEP 4管轄裁判所、申立費用、鑑定委員会の手続、想定期間を弁護士へ確認する

裁判所の案内には、地主側が建物と土地賃借権を自ら譲り受けるための「介入権」に関する申立類型もあります。第三者への売却だけを唯一の結論にせず、地主との合意、地主への譲渡、第三者への譲渡許可の違いを比較します。

無断で売却契約を進めない

土地賃借権なのに地主承諾を得ないまま、無条件の売買契約、手付金の受領、引渡日や建替えを確約すると、承諾が得られない場合の解除、違約金、手付金返還、買主の費用負担を巡る問題になり得ます。承諾前に契約を検討するなら、地主承諾または裁判所許可を条件にするか、期限、費用負担、不成立時の処理をどう定めるかを宅地建物取引業者と弁護士へ確認してください。

  • 土地・建物の登記事項証明書を取得した
  • 原契約、更新契約、承諾書、地代改定の書類をそろえた
  • 地代、更新料、固定資産税等の未払いや精算項目を確認した
  • 借地期間、用途、増改築・建替え制限を確認した
  • 建物の未登記部分、境界、通路、私道、越境を確認した
  • 地主へ伝える買主情報と売却条件を整理した

査定では建物価格だけでなく譲渡条件を同時に伝える

借地権付き建物の査定では、所在地と築年数だけでなく、権利種別、借地期間、月額地代、更新日、地主承諾の状況、承諾料の提示、建替え制限、未払金、建物登記、境界・接道を伝えます。仲介で買主を探す場合と、条件を把握した事業者へ現況のまま相談する場合で、期間、手取り、契約条件を比較してください。

まず売却方法の違いを整理したい方は訳あり不動産の売却方法を比較するを確認できます。共有、私道、相続など複数の権利問題が重なっている場合は権利関係がある不動産の売却準備も参照し、誰が何を売るのかを先にそろえてください。

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地主との条件が固まっていない借地権付き建物も

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登記、借地契約、地代、地主とのやり取り、建物状態を整理し、現況と希望時期を伝えて売却条件を相談できます。地主承諾の要否、裁判所手続、契約条項、税務の最終判断は、弁護士、司法書士、税理士等にも確認してください。

借地権付き建物の現況と売却条件を相談する

よくある質問

借地権付きの古い家でも売却できますか?

売却の可能性はあります。ただし、建物状態だけでなく、地上権か土地賃借権か、残存期間、地主承諾、建替え条件、地代、買主の利用目的が価格と取引条件に影響します。

地主が口頭で承諾すれば十分ですか?

後日の認識違いを避けるため、譲受人、対象権利、承諾日、名義書換料、地代、更新・建替え条件を含む書面化を専門家と検討してください。

地主に承諾料を請求されたら必ず払うのですか?

金額や支払条件は契約と交渉、場合によっては裁判所の判断に関わります。法定の一律割合はないため、根拠と承諾範囲を確認してから合意します。

地主が拒否したら、すぐ裁判所へ申し立てられますか?

借地借家法19条の申立てでは、具体的な買主候補や資力資料、契約・登記資料などが必要です。拒否理由と交渉経過も含め、申立ての要件と管轄を弁護士へ確認してください。

借地権割合を掛ければ売却価格が分かりますか?

借地権割合は税務評価で用いられる指標であり、実際の売却価格をそのまま決めるものではありません。契約条件、残存期間、地主承諾、建物状態、需要を含めて査定します。

参考資料