空き家が一棟でも残っている土地は、相続土地国庫帰属制度へそのまま申請できません。未登記の建物でも、現に建物が存在すれば同じです。先に解体を契約するのではなく、現況のまま売る案、解体して売る案、更地にして国庫帰属を申請する案を、総費用と完了までの不確実性で比べてください。
最初に結論
制度の対象は土地です。建物がある土地は申請段階で却下対象となるため、空き家付き物件では建物をどうするかが最初の分岐です。ただし、解体しても必ず承認されるわけではありません。境界、権利関係、地下埋設物、崖、管理負担など土地側の条件も審査されます。売却可能性を確認せずに解体費を支払うと、売却機会を狭めたうえで申請も通らない状態が残り得ます。
建物があるなら3つの出口を同じ条件で比べる
国庫帰属だけを先に検討すると、解体費、申請費、承認後の負担金、審査中の管理費を別々に見落としやすくなります。売却では価格だけでなく、残置物、境界、契約不適合責任の取り決め、引渡し時期まで含めて手残りを比べます。
| 選択肢 | 最初に確認すること | 主な費用・不確実性 | 向いている可能性 |
|---|---|---|---|
| 空き家付きで現況売却 | 建物状態、残置物、境界、需要、告知事項 | 価格調整、契約条件、仲介または買取条件 | 解体前でも買い手候補が見つかる |
| 解体して土地を売却 | 解体見積り、補助制度、滅失登記、土地需要 | 解体・整地・測量費、売却までの保有費 | 更地の方が買い手を探しやすい根拠がある |
| 更地にして国庫帰属を申請 | 申請資格、却下・不承認事由、筆数、負担金区分 | 解体費、1筆ごとの審査手数料、承認後の負担金、審査中の管理 | 売却・寄附等が難しく、制度要件を満たす見込みがある |

申請できる人と共有地の条件を先に確認する
基本となる申請者は、相続または相続人への遺贈によって土地の所有権や共有持分を取得した人です。制度開始前に相続した土地も対象になり得ます。相続登記が未了でも申請できる場合はありますが、相続で取得したことを示す書類が必要です。
共有地は共有者全員での申請が必要です。連絡が取れない共有者や同意しない共有者がいる場合、他の共有者だけでその土地全体を申請することはできません。権利関係が複雑なら、申請書を作り始める前に法務局と司法書士・弁護士へ確認します。
14,000円と20万円を解体費とは別に見積もる
法務省のQ&Aでは、審査手数料は土地1筆につき14,000円です。複数筆をまとめて申請しても審査手数料は軽減されず、取下げ、却下、不承認でも返還されません。承認された後は、土地の所有権を国へ移すための負担金を納めます。
負担金は20万円が基本ですが、市街化区域等の宅地・農地や森林などは面積に応じて20万円を超える場合があります。承認通知と納入告知書を受け取った翌日から30日以内に納付し、納付時点で所有権が国へ移ります。申請から承認・納付までは所有者が草刈り等の管理を続けます。
| 費用 | 発生時点 | 戻らない可能性 |
|---|---|---|
| 解体・残置物・測量等 | 申請前の準備段階 | 申請が通らなくても支出済み |
| 審査手数料 | 申請時、1筆ごと | 取下げ・却下・不承認でも返還されない |
| 負担金 | 承認後 | 期限内納付で所有権が国へ移転 |
| 管理費・固定資産税等 | 所有権が移るまで | 審査中も所有者負担が続く |
解体しても残る土地側の審査項目がある
建物をなくせば入口条件を一つ解消できますが、承認を保証するものではありません。次のような事情は、通常の管理や処分に余分な費用・労力がかかるかという観点で確認されます。
- 境界が明らかで、隣地との争いがないか
- 担保権、使用収益権、通行妨害、不法占有などがないか
- 地下に基礎、コンクリート片、浄化槽、井戸など管理を妨げる物がないか
- 崖、陥没、漏水など、被害防止工事が必要な状態でないか
- 草木、病害虫、管理費・賦課金など、継続的な管理負担が過大でないか
土地ごとの判断になるため、チェックが付かないことだけで承認を見込まないでください。相談時の見解と、書面・実地調査後の審査結果が異なる場合もあります。
法務局相談には土地の事実が分かる資料を持つ
具体的な相談は、対象土地が所在する都道府県の法務局・地方法務局の本局で受け付けています。相談票とチェックシートに加え、登記事項証明書、地図の写し、境界・所有権に関する資料、土地全体と建物の状態が分かる写真をそろえると、条件を具体化しやすくなります。
- 1登記上の筆数、名義、共有者、取得原因を整理する
- 2建物、残置物、擁壁、井戸、浄化槽、越境の有無を写真と図で残す
- 3現況売却と解体後売却の査定条件、解体・測量見積りを分けて取る
- 4法務局相談で却下・不承認事由と負担金区分を確認する
- 5手残り、完了時期、管理が終わる確度を比較して出口を決める
売却可能性を確認してから解体を決める
建物の状態が悪くても、現況のまま扱う買い手や専門買取が候補になる場合があります。まず訳あり不動産の売却方法で売却先ごとの違いを整理し、遠方管理や寄附を含む選択肢は地方の空き家を手放す選択肢と並べて検討してください。査定額だけでなく、残置物、解体、境界、引渡し条件を差し引いた最終的な負担で比べます。
解体前に現況で扱える条件を確認する
ラクウルの案内を確認する
空き家と土地の所在地、建物状態、残置物、共有状況、希望時期を伝え、現況のまま相談できる範囲と必要な準備を確認できます。国庫帰属制度の適用可否や法的手続は、法務局・司法書士・弁護士へ別途確認してください。
よくある質問
未登記の空き家なら建物なしとして申請できますか?
できません。登記の有無ではなく、現に制度上の建物が存在するかで判断されます。
解体すれば必ず国が引き取りますか?
必ずではありません。建物以外にも、境界、権利、地下埋設物、災害リスク、管理負担などの却下・不承認事由が審査されます。
申請中に買い手が見つかったら売却できますか?
売却前に申請先の法務局へ連絡し、申請を取り下げる必要があります。納付済みの審査手数料は返還されません。
相談で大丈夫と言われれば承認されますか?
相談は提出資料から分かる範囲の見解です。申請後の書面調査や実地調査で結果が変わる可能性があります。

